インプラントの設計が聴こえに与える影響

Woman working in a lab

内耳 (蝸牛) は小さく繊細な渦巻き形の構造をしています。蝸牛内の小さな有毛細胞は音声を信号に変換します。その後、その信号は聴神経により脳に送られます。

人工内耳による聴こえは、通常の聴こえとは異なります。

通常の聴こえでは、音の振動を蝸牛内の有毛細胞に伝えます。人工内耳は、電気刺激を用いて、らせん神経節細胞と呼ばれる別の細胞を刺激します。らせん神経節細胞は、蝸牛の (有毛細胞とは) 別の場所にあり、有毛細胞と結合されています。

らせん神経節細胞はのほとんどは「ヒアリングゾーン」と呼ばれるエリアに集中しています。このエリアは人工内耳の電気刺激に最も強く反応します。1,2,3このヒアリングゾーンは蝸牛内の深部にまでは広がっていません。

そのため、弊社の方針は、ヒアリングゾーンにあるらせん神経節細胞を正確に刺激して最高の聴こえをお届けすることと、刺激頂や挿入時に蝸牛構造を損傷する危険性を最小限に抑えるために電極アレイを深く挿入しないことです。この方針は、弊社のさまざまな電極の開発の基盤となっています。

Cochlear implant inserted inside the cochlea highlighted as blue spiral
demonstration of cochlear implant inserted inside the cochlea

電極の設計と聴こえの成果

電極は蝸牛軸に巻き付くように渦巻き型の形状で、蝸牛の自然な形状に合わせたデザインによって、電気刺激の接点がらせん神経節細胞に近い位置に設置されます。挿入後の電極アレイは、蝸牛外側壁や蝸牛軸に力をかけることなく、安定した位置に留まります。電極を蝸牛軸の周りに設置することで、前例のない聴こえの成果、つまり、集中的な刺激と電力効率の向上が得られることが、研究で示されています。4,5

また、側壁電極が、電気刺激のみモードでも電気刺激と音響刺激の組み合わせモードでも、優れた聴こえの成果をもたらすことが示されています。6

基底部補強材、Softip™ 構造、滑らかな外側面、ハンドルなどの特殊な設計特性により、手術を行う耳鼻科医は、挿入の深さをコントロールして、さまざまなサイズのヒアリングゾーンを最適にカバーすることができるようになります。

基底部に強度があるため、耳鼻科医は電極の挿入を正確に予測でき、挿入時の大きな損傷となることが多い座屈を最小限に抑えるようコントロールでき、手の感覚によるフィードバックも可能になります。先端の柔軟性は、繊細な蝸牛の構造を傷つけるおそれがある挿入時の力を減らすのに重要です。

電極は、蝸牛の繊細な内部構造を保護するデザインと形状である必要があるため、蝸牛軸に巻き付ける電極と側壁電極の形状は異なります。

ハーフバンド型の電極端子によって、外側壁に接するシリコーン表面は滑らで、挿入時の摩擦による損傷を確実に最小限に抑えます。

電極の挿入が深すぎないようにする理由

1.電極アレイを深く (ヒアリングゾーンを越えて) 挿入しても、低周波音の聴き取りが高まるわけではないことが、臨床研究で証明されています。7実際に、電極を深く挿入すると聴取成績が悪くなることが多いことを実証した研究もあります。7,8

2.非常に狭い蝸牛に電極アレイを深く挿入すると、繊細な構造に損傷を与える危険性が大きくなります。9残っている低周波域の聴こえまでもが永遠に失われることにもなりかねません。

3.電極の接点がヒアリングゾーン内に密に接触しているので、将来、装用者の聴こえのニーズが変化した際に、専門家がそれに合わせてプログラムを行う場合、柔軟性が大きくなります。

 

免責事項

難聴の治療については、医師にご相談ください。難聴の状態に応じたアドバイスを受けることができます。弊社製品はすべて、医師からの指示がなければ使用できません。

国によってはご利用になれない製品もあります。 詳細については日本コクレアまでお問い合わせください。

脚注

  1. Ariyasu, L., Galey, F. R., Hilsinger, R., Jr., and Byl, F. M.:Computer-generated three-dimensional reconstruction of the cochlea. Otolaryngol Head Neck Surg. 100, 2; 87-91 1989.
  2. Sridhar, Stakhovskaya, Leake, et al, “A Frequency-Position Function for the Human Cochlear Spiral Ganglion”, Audiol Neurotol. 11(supp 1):16-20 2006.
  3. Stakhovskaya, O., Sridhar, D., Bonham, B. H., and Leake, P. A.: Frequency map for the human cochlear spiral ganglion: implications for cochlear implants. J Assoc Res Otolaryngol., 8, 2; 220-233 2007.
  4. Balkany, T., Hodges, A., et al., Nucleus freedom north american clinical trial. Otolaryngology-Head and Neck Surgery, 2007. 136(5): p. 757.
  5. Cohen, L. T., Saunders, E., and Richardson, L. M., Spatial spread of neural excitation: comparison of compound action potential and forward-masking data in cochlear implant recipients. International Journal of Audiology, 2004. 43(6): p. 346-355.
  6. Skarzynski, H., Lorens, A., Matusiak, M., Porowski, M., Skarzynski, P. H., and James, C. J., Partial Deafness Treatment with the Nucleus Straight Research Array Cochlear Implant. Audiology and Neurotology, 2012. 17(2): p. 82-91.
  7. Battmer, R-D., Ernst, A. Risk and Benefit of Deeply Inserted Cochlear Implant Electrode Arrays. CIAP, Lake Tahoe 2009.
  8. Gani, M., Valentini, G., Sigrist, A., Kós, M. I., and Boëx , C., Implications of deep electrode insertion on cochlear implant fitting. JARO-Journal of the Association for Research in Otolaryngology, 2007. 8(1): p. 69-83.
  9. Adunka, O., Kiefer, J. Impact of Electrode Insertion Depth on Intracochlea Trauma. Otolarynoglogy Head and Neck Surgery, 2006, 135, 374-382.