インタビュー記事:ジム・パトリック
ジム・パトリック MSc, FATSE
主任科学研究員、コクレア社上席副社長
ジム・パトリック氏が人工内耳の研究開発に携わるようになったのは、彼がグレアム・クラーク教授が率いるメルボルン大学の研究チームに准教授として加わった1975年にさかのぼります。 ロッド・サンダーズ氏に人類初の人工内耳埋め込み術を行ったチームの一員として、彼は今日に至るまで、次世代技術の裏で世界的な研究計画を進める、重要な役割を果たし続けています。
ジムさん、1975年に人工内耳技術に初めて取り組んだ当初のビジョンとはどのようなものでしたか?
正直言って、はっきりと見当がついていたわけではないのです。 大きな希望は抱いていましたが、知識がありませんでした。 当初の関心は、臨床的な治療法を開発することでした。 我々には、この分野において新しい治療法の絶対的な必要性があることがわかっていましたし、その必要性を満たす可能性に意欲が駆り立てられました。
人工内耳が、高度から重度の難聴者の生活にどれほど影響を与えるかについて想像していましたか?
当時、私たちは、人工内耳は読話の補助的なものにしかならないであろうと思っていました。 研究に参加してくれた難聴者の方々が、固いワイヤーフレームのヘッドバンド(送信コイルやマイクロホン機能を搭載)や、かなり大きな携帯型プロセッサを進んで装用してくれたことによっても、これがいかに重要であることか分かっていました。 そして、これ(人工内耳)こそが、彼らが手に入れた価値のある治療法であると思います。
コクレアに長年勤務されていますね。 その仕事への情熱を維持させてきたものは何ですか?
私の仕事は、非常に特別で、最高に素晴らしいものです。 私は、数多くのご家族や装用者の方々にお会いすることができ、私たちの仕事が彼らの生活に与える影響を知る機会に恵まれてきました。 臨床応用、技術工学、生体医学など、異なる研究分野の多様性は、いつだって非常に興味深いものです。 私は、そのような有能で刺激的な人々に囲まれて、仕事をしています。 このような恵まれた環境は他にはないと思います。
未来に何が起こるかを考えると心が躍ります。 到達するまでは、まだまだ長い道のりなのかもしれません。 いろいろな意味で、私たちはまだ始めたばかりなのです。 この技術の恩恵を享受された人はまだほんの一握りであり、人工内耳が健聴者と同じような聴こえを提供できるようになるまでの道のりはまだまだ長いのです。
長年にわたって、数多くの特別な出来事を経験されていると思いますが、 その中で特に思い出深い出来事をご紹介いただけますか?
ロッド・サンダーズ氏が自ら協力してくれて、彼に人類初の人工内耳埋め込み術をおこなったことです。 当時の、我々のチームが何年もかけて行ってきた研究の集大成でした。 当時は、人体への埋め込みに適するレベルにまで到達した装置を作り、テストを行うだけで、素晴らしい業績でした。 しかしそれは、サンダーズ氏に聴こえを提供するために装置をどのように利用したらいいのかという、詳しい調査を進める、次の段階の始まりにしかすぎませんでした。
中等度から重度の難聴に悩む人々が、将来的にコクレアに期待できることを教えてください。
近い将来、次の3つの目標に期待ができると思います。それらは人工内耳の両側装用(両耳聴)によってかなり促進されるでしょう:
1. 騒がしい環境下での大幅な聴取の向上 これは装用者の日常生活にとって非常に重要なことです。
2. 音楽を楽しむこともとても重要です。 私たちは、より多くの人々が音楽を楽しむことができる、聴こえの能力開発が可能であると期待しています。
3. 声調言語(音調言語)の音の高低パターンや声調変化に対応。 人工内耳装用者、また人工内耳の装用を検討されている方々の多くが、中国のような声調言語を話す国々に住んでいるため、言語の特徴に対応した機能面を強化し続けることが極めて重要と言えます。
さらに次世代の装用者となる方々には、完全埋め込み型人工内耳システムといった、実に刺激的で革新的な技術の到来が期待できます。